最愛なる…
- jykkanchou
- 2月10日
- 読了時間: 2分
更新日:2月12日

生まれ育った街が真っ白い雪に覆われた朝…
不意に飛び込んで来た姉からの報せ
このくらいの歳になると、
俺がこの世に産み出された時から、
今日という日が来るのは分かってはいたのだが…
今、俺が感じる事の出来ない世界や情景を…
繰り言の様に話す姿を見て、
自分の心の中にある程度の覚悟は
出来ていたつもりではあったが…
歌うたいであれば鎮魂歌を…
表現者であれば悲しみの世界を…
だが、武骨な俺には『この時』 を上手くあらわす術がない…。
粛々と執り行われる旅立ちの儀式
真っ直ぐに哀しみをあらわす者、
虚空を見詰めてため息をつく者、
皆、それぞれに心に去来する様々な記憶と現実に向き合っている
そんな愛に溢れた大切な人達を傍らで見て、
1年程前の自分の姿を思い出す…
50を少し越えた男が…
細くなった腕
丸く小さくなった背中
もう旅立ってしまった兄弟の事を
楽しそうに俺に話す貴女と
小さな病室でずっと居たとき…
心と魂が枯れてしまう程の涙が溢れた…
貴女に気付かれない様にと、
誤魔化しながらずっとずっと
貴女の話を聞いていた…
昼下がりの小さい二人きりの病室で…
だからこそ今日は
いつもの自分でいられる…
今日の様な雪が降る2月に
貴女の苦痛の中から
生み出された俺の旅
旅で出会った、師、友、兄弟達が
色々な形で貴女の旅立ちを
送り出してくれている…
ひと時の深い哀しみは確かにあるが、
こんな幸せな事はない…
貴女に与えられた俺の旅が
沢山の人達の幸せに繋がるように…
俺自身の旅を終えて
再び貴女に会えたとき
『よう、がんばったな…』
『それでこそ、私の息子…』
と、褒めて貰えるように
これからも
強く、逞しく、自分らしく
生きて行こうと思う…
貴女の息子として生まれて本当に幸せでした…
俺もこの旅の役目を全て終えたら
また貴女に会えると思います。
遥か先に旅立った親父とも、
そして旅立って逝く貴女とも、
よくよく考えたら、
一緒にお酒を飲んだ記憶がありません…
また今度会えた時は楽しく飲みましょう…
その時は二人で…
めいいっぱい褒めて下さい…
そんな未来を楽しみにしています。
以上
心からの感謝を込めて…
慈佑館館長 北川 彰良
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